behind-the-scenes story

NODATE

 2005年から産地ブランドとして立ち上げたBITOWAで国内外の展示会に出展してきた経験から、国内外のバイヤーや消費者が「漆」や「塗りもの」をどう捉えているか、理解を深めることができました。何年にも亘って、輪島、越前、津軽など、日本のあらゆる漆器産地が会津と同様に海外展示会に出展していましたが、大きな実績に繋がっている産地は皆無。各産地がベストな塗りをアピールしても欧米のバイヤーには評価されない状況が続いていました。一方、南部鉄器(鉄)、薄張り(硝子)、西陣織(絹)、鎚起銅器(銅)、桜樺細工(樹皮)などは高い評価を受け、実績を積み始めています。違いは何か、気付いた答えは納得できるものでした。実績に繋がっている製品は欧米でも周知の素材がベース。それを日本人が作ると繊細で素敵なモノが生まれ、高価なりの価値がある、と認識されて買い付けに繋がります。しかし漆は違っていました。欧米人の日常の暮らしには漆がないのです。和英辞書や外務省広報では「磁器=China、漆=Japan」と欧米で認識されている、というのが通念でしたが、実際は、Japanと伝えても誰にも理解されず、Lacquer(ラッカー/塗装品)と説明して初めて理解されるのです。欧米人にとって漆に最も近い印象の素材は石油化学系樹脂(プラスチック)やウレタン塗装です。素材認識の違う文化の壁を越えるのは至難の業だと感じました。

一方、BITOWAで提案する木目の見える製品には世界ブランドのバイヤーが興味を示すことがありました。木は世界共通素材だから、そこに日本の技術の素晴らしさを感じ取れたのでしょう。この気付きは大きなものでした。そして国内でも漆器に触れた経験のない若者にとっての漆は欧米人にとってのそれと同様であることにも改めて気付かされました。

 2009年、初めてテント泊で参加した野外フェスが「森波/Wood Vibration」という宮城県登米市で開催されたフェスでした。森の中で繰り広げられる音楽イベントはとても新鮮で心地良い時間を過ごすことができましたが、身の回りの道具が金属、樹脂、化学繊維ばかりで天然素材のものが殆どないことに気付き、機能的な便利さを感じる一方で、違和感を覚えました。そんな中、ククサという白樺の瘤から作るフィンランドのマグが一部のキャンパーに支持されているのを知ります。本国製の価格で8,000円程度していましたが、それでも人気でアウトドア誌に度々掲載されていました。バックパックに下げる革紐が付いていてとても雰囲気のある自然素材の器です。調べてみると、手彫りで刳り貫いた白樺の瘤をオイルフィニッシュで仕上げている製品でした。オイルは天然素材で木の手触りが感じられて良いのですが、家具などには適していても、飲み物を入れる塗膜には適さない筈。熱い飲み物でオイルが溶け出るし、溶け出ないほど使い込めば逆に飲み物が木に浸み込んでしまう。そこで「漆」の方が適切ではないか、という思いが芽生えました。

漆の性能を改めて調べてみると、漆塗膜の上では大腸菌やサルモネラ菌など雑菌が死滅する、硫酸(強酸)や硫酸(強アルカリ)にもびくともしない、耐熱性能が200度以上ある、氷点下でも凍結しない、補修し続けられ、そして何よりウルトラライト(超軽量)である、など様々な漆の性能がアウトドアシーンで求められる性能を満足させられることが分かってきました。BITOWAでの海外出展経験、国内での野外フェス経験などを通して、2009年、デザイン検討に入り、2010年、最初のNODATE Mugは、木目を見せる「摺り漆」の技法で誕生しました。

NODATEは、外で点てる茶事・野点(のだて)から取ったブランドネーム。古来、日本人が楽しんだアウトドアカルチャーの代表です。そして会津塗の生みの親、蒲生氏郷公が千利休の七哲(蒲生氏郷、前田利長、細川忠興、古田織部、牧村兵部、高山右近、芝山監物)の筆頭とされた茶人もあり、利休の死後、息子・千少庵の蟄居先が会津であったという、今に繋がる茶道の歴史と会津の関係も茶の湯の言葉を意識させるファクターになりました。

2011年2月のギフトショーでの初展示では、多くのアウトドア系バイヤーから興味を持って頂くことになります。アウトドア界のコンセルジュとして影響力のある方からサイズ展開のアドバイスを頂いたことが、その後のOneやtanagocoroの開発にも繋がりました。また、発表後間もなくウルトラライト系のギア取扱店としてアウトドア業界でも影響力のあるショップ・MoonlightGearが扱いを始めてくれたのは驚きであり喜びでした。NODATEの軽さが評価されたのです。

以降、ELLE JAPON、サライ、mono magazine、BRUTUS、家庭画報などファッション・カルチャー誌面への掲載が続き、やがてBE-PAL、GO OUT、ランドネなどのアウトドアファッション専門誌の誌面も飾るようになりました。

当初のNODATEはマーケットが求めるイメージから無地の商品ばかりでしたが、木地師・塗師・蒔絵師の分業で完成させる会津塗コミュニティを未来に繋ぐ、という視点からすると蒔絵師の仕事に繋がらないのは課題でした。しかし花鳥風月を礎とする従来の蒔絵ではNODATEユーザーの志向性に合いません。そこで、スケーターやフェスなどサブカルチャー界で活躍するアーティストの図案で新しい蒔絵を表現することに挑戦しました。

最初に関わってくれたアーティストが会津出身の日米で活躍する絵師・MHAKです。MHAKには、Mug、One、tanagocoro、Chabu、NODATEロゴをデザイン頂き、今に続くNODATEの世界感作りをサポート頂きました。若いスケーターがスケートボードを片手にMHAKデザインのtanagocoroを腰から下げて使ってくれているのを目にした時、漆器の世界に新しい風を起こせているのを実感できました。その後、Kads Miida氏、Sense氏、狩集氏など、熱烈なファンに支持されるアーティストと連携しながらNODATEが目指すべき方向性を表現しています。

2015年にはとても嬉しい出来事が。Oneが淡交社のオンラインストアで販売頂けるようになったことです。淡交社は茶道界を代表する美術出版社。NODATEは前述した通り、茶の湯の野点から名前を頂いたブランドです。茶道界から認知頂けたことにはとても勇気づけられました。

現在は、チャブ、プレート各種、ベントー重、カトラリーなど、品揃えを拡げ続けながらNODATEファンのニーズに寄り添う努力を続けています。

2020年で誕生から10年。その間、Monro、ELNESTなど、弊社がリスペクトするアウトドアブランドとのコラボレーション製品が生まれ、FIAT、LAND ROVERなど車メーカー、自然療法にこだわるハブティーブランド・Yogi Tea、無農薬な自然酒の蔵元・仁井田本家など、従来の漆器業界の取引先としては想像できないような業界の皆様とリンクさせて頂けるようになっています。

最近ご好評頂けている新作は、首から下げるアクセサリー感覚のミニチュアMugで「choco」という製品。日本酒1合の10分の1、1石(せき:18cc)が容量の小さなサイズです。フェス会場で首から下げて下さる方を見かけるようになりました。2018年には、植樹祭で福島にお越しになられた上皇上皇后両陛下の目に止まり、3色ともお求め頂けたという奇跡もありました。

もう一つは、朴木の板材を湯曲げする技術で作るプレートで、朴葉をイメージした葉っぱ型のお皿「leaf plate」です。カレー、パスタ、サンドイッチ、様々な食材を葉っぱの上に載せて頂く様子が何ともナチュラル感を演出してくれます。洗い終えて革紐でロープに下げても風に揺られる葉っぱ型のお皿が絵になる製品です。

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